ヒオウギ

名前の由来は、葉の並び方が『檜扇』という扇子みたいなものに似ているところから。
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ヒオウギ 檜扇
葉は剣状の線形で根際から扇状に広がります。葉の様子が檜扇(平安時代の貴族の持った檜の薄い白板をとじ合わせた扇)に似ているというのが和名の由来。
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本州から沖縄にかけて分布し、山地の草原に生えるのですが、普通は殆どが鑑賞用として栽培されてるものです。草丈は60センチから100センチくらい。台湾、中国、インド北部などにも分布しています。
◇科名:文目(あやめ)科 ◇属名:ヒオウギ属( Belamcanda=ベラムカンダ。この種に対するインド『Malabarマラバル』地方の現地語 ◇学名:Belamcanda chinensis(chinensis=中国の)
開花時期は7月から9月で、茎の上部で枝分かれをして花径が3、4センチくらいの花をたくさんつけます。
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花被片は6枚で反り返らずに平らに開きます。花被片の色は橙色で、内側に暗赤色の斑点があるのが特徴です。雄蘂は3本、雌蘂は1本。花は夜には萎んでしまいます。
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花の後にできる実は、熟すると下部が裂けて種子が散布される朔果です。この朔果から出る種子は、黒くて艶がある丸い種子で、これを『ぬばたま』『うばたま』と呼び、和歌で枕詞(夜・夕・髪などに掛かる)とされます。
因みに檜扇は、檜の薄板を要で留め、板の上部を紐で補強し折りたたみ可能にした扇です。宮中で用いられた木製の扇のことで、女性の用いるものは特に袙扇(あこめおうぎ)とも呼びます。
但し、要の止め具は本来和紙の紙縒りを使っていましたが、現在は木釘や金具を使っています。
現在、皇族女性は一律に39橋の檜材の柾目挽きの扇に、松と梅の糸花(絹糸を使った造花)を飾り6色の糸で綴じたものを用いておられます。
実(み)は黒色でこれを『射干玉(ぬばたま)』または『烏羽玉(うばたま)』といいます。
別名は、実が黒であるところから『烏扇(からすおうぎ))』
※この射干玉の射干の音読みから名前がつけられたのが『しゃが(著莪)』

原文: 奴婆多麻乃 欲和多流月尓 安良麻世婆 伊敝奈流伊毛尓 安比弖許麻之乎 作者:不明(遣新羅使(けんしらぎし))

ぬばたまの 夜(よ)渡る月に あらませば 家なる妹(いも)に 逢ひて来ましを
意味:もし私が夜を渡ってゆく月だったならば家にいる妻に逢って来るんだけれどなぁ…
この歌は新羅(しらぎ)に遣わされた船団が筑前國(志麻郡(しまりこほり)の韓亭(からとまり)の停泊して三日たった夜に月が明るく照らしていたのを見て遣新羅使(けんしらぎし)たちが詠んだうたの一つです。