卯の花

卯の花の 匂う垣根に 時鳥早も来鳴きて 忍音(しのびね)もらす 夏は来ぬ
さみだれの そそぐ山田に 早乙女が裳裾(もすそ)濡らして 玉苗(たまなえ)植うる 夏は来ぬ
橘の 薫る軒端の 窓近く蛍飛びかい おこたり諌むる 夏は来ぬ
楝(おうち)ちる 川べの宿の門かど)遠く 水鶏(くいな)声して 夕月すずしき 夏は来ぬ
五月やみ 蛍飛びかい 水鶏鳴き 卯の花咲きて 早苗植えわたす 夏は来ぬ
※2013年まで著作権が存続しておりました。
佐佐木信綱作詞、小山作之助作曲。1896年の5月に『新編教育唱歌集(第五集)』で発表されています。*2007年に日本の歌百選に選出されていますね。
※「楝(オウチ/アフチ)」は栴檀の古名ですね。万葉集にもその名を見ることができます。「センダン」は千の珠という意味ですよ。実をびっしりとつけるところから。
卯の花』おからじゃなくて(笑)『空木(ウツギ)』のことですね。
5月、6月はウツギの花の季節です。
単にウツギと呼ばれる樹の花は、別名ウノハナとして、この「夏は来ぬ」に唄われる花を指します。
ウツギは「空木」と書きますね。茎あるいは枝が中空の樹を一般に○○ウツギと呼び、ご存じの通りいろいろあります。
そしてほとんどがこの季節に花を咲かせますね。ウツギを含め、○○ウツギの樹に共通する特徴は、低木かせいぜい亜高木であること、また株立ちで多くの細い幹を立たせること、葉は対生で、楕円で先が尖っていることなどがあるのですが……属する科は大きく異なっています。
次のようなものがありますね。
ユキノシタ科ウツギ属】〈ウツギ〉〈ヒメウツギ〉〈マルバウツギ〉
ユキノシタアジサイ属】〈ノリウツギ〉〈ガクウツギ〉
バラ科コゴメウツギ属】〈コゴメウツギ〉
ドクウツギドクウツギ属】〈ドクウツギ
スイカズラタニウツギ属】〈タニウツギ〉〈ハコネウツギ
スイカズラ科ツクバネウツギ属】〈ツクバネウツギ〉
ウツギ属の御三家は、本家ウツギとヒメウツギ、マルバウツギです。
で…今回はコチラを…
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ヒメウツギ 姫空木
ウツギとヒメウツギの花は、葉の毛の有無で区別出来ます。触れば分かりますね。ヒメに毛は無いのです。
マルバウツギは、名前の通り葉が丸いので分かります。花も小さいです。
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ウツギより、葉や花が小型なことから『ヒメウツギ』。ウツギの仲間では一番早く花を咲かせます。5~6月に円錐花序を出し、白い花を多数つけます。
谷沿いの岩場などに多く高さは1~1.5m程です。
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葉は対生でつき、葉身は長楕円状披針形で、先がとがります。縁に細鋸歯があります。
表面に星状毛が散生しますが、裏面はほとんど無毛
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◇科名:雪の下科 ◇属名:ウツギ属((Deutzia=ドイツァ。hunberg の後継者でオランダの『Johan van der Deutz』に対して1781年に捧げられたもの ◇学名:Deutzia gracilis(gracilis=細長い、繊細な)
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樗咲く北野の芝生五月来ぬ見ざりし人の形見ばかりに 藤原定家


どむみりと樗や雨の花曇り 芭蕉


ナガホウツギ 長穂空木
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*因みに…この夏は来ぬは文語で「来」はカ行変格活用動詞「来(く)の連用形で、「ぬ」は完了の助動詞「ぬ」の終止形です。全体では「夏が来た」という意味になるのです。
この歌は、2015年3月14日に開業した北陸新幹線上越妙高駅で発車メロディとして使用されています。
山にウツギの仲間の、白い花たちが咲きはじめると、梅雨の季節になる。
もう一つのブログでミツバウツギをアップしています。