オニドコロ

ツル性の多年草で、日当たりのよい林縁や植林の幼木などによくからみついています。
鬼野老 オニドコロ
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エビを海老と書くように、トコロ(野老)はヒゲ根を野の老人に見立てたものです。名前の由来は、根に塊ができる事から『凝(とこり)』がなまってトコロ=野老'''になったとされています。
古来からヒゲ根を正月の床に飾って長寿を願う風習があり、「野老飾る」は季語にもなっています。トコロは古くから知られた植物で【万葉集】には「ところずら」の名で長歌一首、短歌一首が詠まれています。
原文: 皇祖神之 神宮人 冬薯蕷葛 弥常敷尓 吾反将見 作者: 不明
すめろきの 神の宮人(みやひと) ところづら いや常敷(とこしく)に 我れかへり見む
意味: 代々の天皇に仕えている宮人が野老(ところ)の蔓(つる)のように、とこしえ(=末長く)に続いて行くように、いつまでも吉野を見ていたいものです。
*野老(ところ)づら」の「づら」は、蔓(つる)のことです。
短歌と長歌ともに、いずれも「いや常(とこ)に」「尋(と)め行き」という言葉を引き出すために使われています。
因みに…埼玉県所沢市の所沢の名の由来も在原業平が野老(ところ)が多く生えているのを見て「この地は野老(ところ)の沢か?」と言った事に由来するとされています。
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以前記事にしたようにトコロにもいろいろ種類があるのですが、一番目に付くのがこの『オニドコロ』だと思います。葉が大きいのでオニドコロと呼ばれます。
◇科名:ヤマノイモ科 ◇属名:ヤマノイモ属(Dioscorea=1世紀のギリシャの自然科学者A.D.Dioscorides に捧げられた名) ◇学名:Dioscorea tokoro(tokoro=トコロ)
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夏になると葉腋に、雄花序と雌花序の花を多数平開します。花序は細いひも状で、淡緑色の6花披片で、とても小さくあまり目立ちません。
雄花序は直立します。雄花には6個の雄しべがあります。雌花序は下垂します。

葉は長さ幅ともに10cm前後の円心形で葉先は三角形状で、互生につきます。
全体としては『ヤマノイモ』と同じようなハート形の葉を付け、蔓性で、葉だけ見ても一瞥では区別が付にくいですが、『ヤマノイモ』の葉はどちらかと言えば、細い三角形状の披針型をしていて対生なので、互生につくオニドコロはとは、よく見れば区別が出来ますし、花は全く異なりますね。『モミジドコロ』は葉っぱの形が違うので区別がつきますね。
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雌花に出来る果実には、楕円形の翼があり果軸に連なってぶらさがります。この翼は晩秋から冬にも淡褐色になったまま残っているので結構目立ちます。 さく果は上向きにつき、倒卵状楕円形で3翼がある。果実には3室があり、それぞれに2個の種子が入る。
因みに…『ヤマノイモ』の場合、さく果の翼は円形です。『ヒメドコロ』だと葉柄基部に小さな突起がある。
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ところで…(駄洒落じゃない)…ヤマノイモはいわゆる自然薯で美味しい食物ですが(オイラも好きです)、オニドコロは灰汁(あく)で煮て水にさらして調理しないと食べられません。と言うのはこの句があるからで…
「この山の かなしさ告げよ 野老堀り」・・・・芭蕉
しかも…この根を細かく砕いて渓流に流すと、魚を麻痺させて捕らえる魚毒となるのですが…。
どうやら、芭蕉の句にあった頃は、良く掘られていたようですね。昔は灰汁で煮て水にさらし調理して食べられていたと思われます。
因みに…ヤマノイモ(自然薯)を掘る時は葉が枯れた後なので、葉が付いているうちに確認しておいて掘ったほうがイイですな。
根茎は肥厚しますが、ヤマノイモや、畑で栽培されるナガイモのようにイモ状の塊根にはなりません。
肥厚した根茎には強い苦みがあり上述したように有毒です。