ウツギとマルバウツギ

卯の花の 匂う垣根に ほととぎす 早も来鳴きて 忍び音もらす 夏は来ぬ
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この『卯の花』は空木の事ですね。卯の花と呼ばれる『ウツギ』はもうアチコチで満開です。
日本原産です。5月頃に白い5弁の花を沢山咲かせます。幹の中が中空で、空ろな木だから『空木(うつぎ)』。
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卯の花←『ウノハナ』(『おから』の説明と、空木の名が付いた花)の記事
「~ウツギ」の名を持つ樹は、沢山ありますがみな同じように中空のものが多いです。卯の花卯月(うづき陰暦4月)に花が咲くから。
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ウツギ 空木
山野の、日当たりの良いところに普通に生えてますが、畑の境の生け垣や、庭木として植えられる事も多いです。このウツギだけでなく、『ヒメウツギ』や『ガクウツギ』『コゴメウツギ』『ツクバネウツギ』などたくさんの仲間が咲くので、初夏からは白い花でいっぱいになりますね。
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側枝の先に円錐花序を付けます。(※円錐花序=下のほうになるほど枝分かれする回数が多く、全体をみると円錐形になる)
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花弁は5枚で雄蘂は10本、花柱は3~4本で、雄蘂の花糸に狭い翼があります。
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◇科名:ユキノシタ科 ◇属名:ウツギ属(Deutzia=ツンベルクが後援者の「Johan van der Deutz」にちなんで1781年に捧げたもの ◇学名:Deutzia crenata(crenata=円鋸歯状の)
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材質は硬く、楊枝や木釘などに用いられています。
樹高は1メートルから2メートルくらいで、葉は細長い卵形で先が尖り、向かい合って生える対生。
葉の長さは3センチから6センチくらいで葉の縁には浅い鋸歯があります。
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花の後にできる実は緑白色をした球形で、熟すると下部が裂け、種子が散布される朔果で、熟すと3つから4つに裂けます。
別名に『雪見草』というのがあります。これは、古い日本の国では、エジプトをはじめとした外国のように、星や太陽を観測して種や苗を植えると言うよりは、比較的に、四季がはっきりとした特徴を持つ日本列島では、古くから季節ごとに、花が咲いたり、終わったりすることで、いろいろな農法の種まきや収穫の合図としていたことからよく歌にも詠まれていたのでしょう。
なお、葉や実を乾燥させたものには利尿効果があり、生薬名として用いられます。生薬名は溲疏(そうじょ)と言います。俳句では、「卯の花」「空木の花」「花空木」「卯の花垣」などが夏の季語。
万葉集にも幾つかの空木の歌があります。
原文>宇能花乃 咲落岳従 霍公鳥 鳴而沙度 公者聞津八  作者: 不明
卯の花の、咲き散る岡ゆ、霍公鳥、鳴きてさ渡る、君は聞きつや
意味: 卯の花が咲き散る岡を通って、霍公鳥が鳴き渡りましたよ。あなたは、聞きましたか

原文>霍公鳥 来鳴令響 宇乃花能 共也来之登 問麻思物乎 作者: 石上堅魚(いそのかみのかつを)
霍公鳥、来(き)鳴き響(とよ)もす、卯の花の、共にや来(こ)しと、問はましものを
意味: 霍公鳥が来て鳴いています。卯の花と一緒にやってきたのかと、聞くことができたらいいのに。
この歌は神亀五年(西暦728年)に大伴旅人(おおとものたびと)の夫人、大伴郎女(いらつめ)が病気のために亡くなり、石上堅魚が弔いに都から遣わされ、弔いのことが完了した後に、大伴旅人や、大宰府のお役人の人々と記夷城(きいじょう)に登って望遊した日に、この歌を詠んだと記録があります。*『記夷城きいじょう【基肄城】』 今の佐賀県三養基(みやき)郡 基山(きやま)町から福岡県筑紫野市にかけてあった朝鮮式山城。665年、大宰府の防備のために、北側の大野城とともに造られました。
以前にアップしたいろいろな空木の花の記事はコチラ↓

コチラは『丸葉空木』
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丸葉空木(マルバウツギ)
関東地方から九州にかけて分布し、山地に生えます。樹高は100センチから150センチくらい。
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葉は卵形で、向かい合って生える(対生)。空木(ウツギ)よりも葉が丸いので丸葉空木(マルバウツギ)
こちらも日本固有種です。表面は葉脈がへこみ、学名にあるようにざらつくのが特徴です。
◇科名:ユキノシタ科 ◇属名:ウツギ属(Deutzia=ツンベルクが後援者の「Johan van der Deutz」にちなんだもの ◇学名:Deutzia scabra(scabra=ざらつく)
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両面に星状毛と言う放射状に伸びる毛が生えます。ウツギと同じく枝先に円錐花序を出し、花径15ミリから20ミリくらいの白い5弁花を上向きにたくさんつけます。萼片は5枚で、雄蘂は10本、雌蘂が3本。イメージ 4

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花の後にできる実は球形のさく果で、星状毛がたくさん生えます。
以前にもう一つのブログで記事アップしたことがあります。→マルバウツギ