ガクアジサイとイワガラミ

ガクアジサイ(額紫陽花)』
このアジサイが、所謂一般にアジサイの名所で咲いている紫陽花の基本形と言えます。
一般に見られるアジサイはこのアジサイの変種で園芸種ですね。
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周囲の花弁に見える装飾花が、両性花を縁取る額縁のように見えるため、この名がついています。 一般に花といわれている装飾花と言うのは、雄蘂と雌蘂が退化したもので中性花と言います。
本年枝の先に散房状集散花序をつけます。 花序は径12~18cmで、縁には萼が大型化した装飾花があります。
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ガクアジサイの花は、中央部の「両性花」と、外周部の「中性花」で構成されています。
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「両性花」とは雄しべと雌しべが揃っている花で、「中性花」は両方とも無い花です。
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『ハナビ(隅田の花火)』
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ガクアジサイ(額紫陽花)の品種で、周りの装飾花(額=萼)が八重です。アジサイは花びらに見えるのは萼です。花色は淡紅色や紫もあります。
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ガクアジサイの八重咲き品種が『墨田の花火』として、あまりにも有名になったのは何故かは不明なのですが、実は誤った品種名のまま普及しているのです。
品種名は『花火』が正式名なのです。学名も『hanabi』となっていますね。
名前の『スミダ』ですが…『墨田』と『隅田』両方で紹介されたりしていますが、『墨田』は区の名前ですので、名前の由来は、隅田川の花火大会からきているのでオイラ的には『隅田の花火』が正しいと思っています。
因みに…花火の名前がついた植物には彼岸花科で『フットボールリリー』という花が、別名『線香花火』と言います。もう一つが『花火草』の別名のある爆蘭(←記事)。
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◇科名:アジサイ科 ◇属名:アジサイ属(Hydrangea=ハイドランジア)ギリシャ語の「hydro=水+angeion=容器」から
萼紫陽花は「Hydrangea macrophylla form. normalis」で(=通常の、正規の)と言う意味。
◇学名:Hydrangea macrophylla form. normalis"Hanabi"
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『スミダノハナビ』はアジサイ科ですが、一部にユキノシタ 科とするサイトもあります。
従来はユキノシタ科に入れられていたのですが、 花形の違いにより現在はアジサイ科として独立されたのが現状です。


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花は ガクアジサイに似ていますが、これは『イワガラミ』。本州・四国・九州、朝鮮に分布する木本性の落葉ツル植物です。
イワガラミ 岩絡み
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葉は対生し、縁には荒いやや不規則な鋸歯があります。
花は5月から7月にかけて枝先に花序を形成します。中心部にたくさんあるのが小型の両性花。周辺にあるのは1枚の白色の萼からなる装飾花です。
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◇科名:ユキノシタ科 ◇属名:イワガラミ属(Schizophragma(「schizo=切れる、裂ける+phragma=隔壁、壁」。果実が熟すと壁の肋と肋との間で割れて、裂けるため ◇学名:Schizophragma hydrangeoides(hydrangeoides=アジサイ属(Hydrangea)に似た)
主にブナ林などの夏緑広葉樹林の樹幹や岩などに名前の通り這い登って生育します。
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実は生態的にも形態的にもよく似た種に『ツルアジサイ(ゴトウヅル)』があります。装飾花が違うので、花が咲いていれば間違うことはないはず…なのですが、しかし…高木に登ったものになると、葉の形もよく似ているので、双眼鏡がなければ判別しにくいでしょうね。
イワガラミの方が葉の鋸歯が粗いので、特徴が判る典型的な葉であれば、区別が出来るでしょうが、林床の地面を這っていたり岩に付着しているものでは難しいでしょう。因みに『ツルアジサイ』は装飾花の萼片が3~4枚です。この『イワガラミ』は1枚です。
一応…ツルアジサイの方が標高の高いところに生えます。4~6月頃キュウリの香りがする新芽を摘み取り、さっと茹でて和え物や味噌汁の実、お浸しなどにできます。
因みに…かなり以前ですが、ニュースでイタリアンレストランが紫陽花の葉を盛りつけ皿として出して、その葉を食べたお客さんが食中毒を起こすという事件がありました。紫陽花の葉には食べると、胃酸の消化酵素と融合し、有毒物質シアンになると言うことです。下記で説明していますが、紫陽花はアジサイ属ですが、イワガラミはイワガラミ属なので食用にしても大丈夫。