ウツボ草とヤセウツボ

3~8cmの花穂に、紫蘇科の特徴?とも言える紫色の唇形花を密集して咲かせます。
名前の由来は、毛ばだった花穂のようすが、武士が矢を入れて持ち歩いた用具弓矢を入れる靫(うつぼ)に似ていることから。
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草丈は20センチから30センチくらいです。
ウツボグサ 靫草
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別名は『カコソウ(夏枯草)』別名は、夏に花穂が急に褐色に変わり、枯れたようになるため。これは結実するためです。※同じ名前のつくものに ケブカツルカコソウ があります。
以前にも記事アップしてます→『ウツボグサ』
◇科名:紫蘇科 ◇属名:ウツボグサ属(Prunella=ドイツ語ですが意味不明(笑)。語源には議論の多い語で、リンネ以前には屡々(たびたび)Brunellaと綴られることも多いらしい ◇学名:Prunellavulgaris var. lilacina(vulgaris=普通の、通常の/lilacina=藤色の、ライラック色の)
※属名のPrunellaですが、異名の『Brunella Mill.』はドイツ語の扁桃腺炎の意味=Brauneに由来します。これは、かつてはウツボグサ属の植物が、その病気の治療に用いられていた事によるらしいです。しかし、Brunellaを用いる本もあるのですが、本来はPrunellaが正しいという事なのです。
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茎は四角で基部から走出枝を伸ばします。茎や葉には白い毛が生えます。葉は対生し、葉身は楕円形で先は鈍く尖ります。
葉の形は長い楕円形の向かい合って生える対生で、葉の縁には低い鋸歯があります。
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開花時期は6月から8月で、茎先に紫色の唇状をした花が穂状に固まって咲きます。
上唇は帽子のような形で、下唇は3つに裂けて、真ん中の裂片は細かく切れ込みます。シソ科の花の典型的な形ですね。
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萼片は5枚で、先が鋭く尖ります。雄蕊は4個で花筒の内側につき下側の1対が長く、花柱は1個で柱頭は不揃いに2裂します。
茎は走出枝(そうしゅつし)で、これは親株から出た茎が地表面を這うように長く伸びて、先端の節からまた新しく芽や根が出てきて、子株になったものです。『オリヅルラン『ユキノシタ』(←記事)『ホテイアオイ』(←記事)『ジュウニヒトエ』(←記事)『イチゴ』などが代表例。『十二単(ジュウニヒトエ)』(←記事)其の② 
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走出枝は匍匐茎・匍匐枝(ほふくし)の一種です。ランナーとかストロンとも言います。オリヅルランを育てた事がある人はご存じでしょうが、ある程度育成した走出枝は、親株から切り離して独立させることができますね。これは栄養繁殖の一種でランナー繁殖と呼ばれます。

花の後にできる実は小堅果状で4分果(*分果=複数の子房からできた果実)です。若芽は食用になります。この花穂を乾燥させたものを生薬で『夏枯草(かこそう)』といって、利尿薬として利用されます。
9月19日の誕生花で、花言葉は『優しく癒す』『協調性』

別名の『カコソウ(夏枯草)』の状態に少し似ているものに『ヤセウツボ』というのがあります。ウツボグサ属は世界に7種あって、すべて多年草
『痩靫』 ヤセウツボ
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花期は6月初め頃までで、もう過ぎていますが、茎の上部にまばらに花をつけます。
この植物は、ヨーロッパ原産の寄生植物です。
シロツメクサ(他にキク科やセリ科)などにに寄生して、葉緑素を欠きます。
◇科名:ハマウツボ科 ◇属名:ハマウツボ属(Orobanche=orobos=マメの一種+anchein=絞め殺す)この属の植物にマメに寄生するものがあるため ◇学名:Orobanche minor(minor=より小さい)
葉はまばらに互生してついて茶褐色で披針形をしています。
高さは15~40cmで、全体に腺毛が密生します。
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花弁は唇形花冠で、淡黄褐色で紫色の筋があり、長さは1.2~1.5cmで、縁は不規則に切れ込んでいます。
萼は左右2片に分かれています。
雄しべは4個で雌しべは1個で頭は赤褐色で膨らんで2つに分かれます。

*寄生植物(=parasitic plant)とは、他の植物に寄生し栄養分を吸収して生育する植物の総称。
寄生根と呼ばれる特殊化した根で相手植物(寄主または宿主)の組織と結合して栄養分を吸収します。
『ヤセウツボ』(←以前の記事)
因みに…食虫植物の『ウツボカズラ』はコチラ→靫蔓(記事)全く別の植物ですよ。