オオフジイバラ(大富士茨)

薔薇の花の季節ですね~~(⌒▽⌒)。さて一般に《野バラ》と呼ばれるのは、山野に普通に自生するバラ科バラ属の仲間です。
因みに《ノバラ》と言うは総称なので、ノバラの名を持つものはありません。
まぁ普通に見られるのは、何度か記事アップしてます《ノイバラ》と《テリハノイバラ》ですね。
今回は《オオフジイバラ》です。他にも《モリイバラ》や《フジイバラ》とというのがありますが、少し標高の高い山地に分布してます。
《ミヤコイバラ》《ヤブイバラ》《ヤマイバラ》と言う品種とあって、こちらは中部あるいは近畿以西に分布しています。
どの花も花や葉あるいは樹形などがよく似てるので、見分けるには大体、葉柄の基部につく小さな葉状の托葉が見分けるポイントのひとつになります。
さてと今回は《オオフジイバラ》です。
オオフジイバラ 大富士茨
高さ2mほどの落葉低木です。幹は普通直立しますが、他の植物などに寄りかかる場合もあります。茎にはやや鉤(かぎ)状に湾曲した鋭いトゲが対になってついています。
イメージ 1 
初夏に咲く花は枝先に円錐塔状の円錐花序を出して、ややまばらに花をつけます。
花弁は5枚で白色、花径が2~3cmほど。
イメージ 2
葉は長さ7cm前後の奇数羽状複葉(葉軸の左右に小葉が並び軸頂に1枚つく)で、小葉は2~3対です。葉の表面にはやや光沢があります。小葉は葉先が三角形状の長さ3cm前後の長楕円形で鋭い鋸歯(葉の縁のギザギザ)があります。頂小葉は卵状楕円形で側小葉よりも大きい。
托葉(葉柄の基部の両側につく小さな葉状の部分)は、淡緑色から帯赤色まで変異はありますが、托葉の先がやや細くなりその先が糸状に伸びていて、人が万歳したような形になっているのが特徴です。
果実は径8mmほどの偏球状で、秋に赤く熟します。
イメージ 4

名前の由来ですが、この仲間の古名は【宇波良(うばら)】で、【茨(いばら)】はトゲのある木を総称する言葉のようです。古名から転訛して【バラ】となったという説があります。

オオフジイバラの名は、富士山周辺に多いフジイバラよりも花がやや大きいことから《大富士》と命名されたようです。

イメージ 3
さてと、そうなるとそれぞれの見分け方が難しいかな。
まず普通に見かける《ノイバラ》では、花穂に多くの花をつけるのが大きな特徴なのですが、さすがにこれだけでは同定出来ません。で、判別するには'''托葉'と呼ばれる葉柄の基部の両側につく小さな葉状の部分が.細かく深く裂れ込んでいて、細い糸状になったクシの歯状であるのが特徴です。
この《オオフジイバラ》の場合は、葉の表面にやや光沢がありますが、これだけだと《テリハノイバラ》にも同様に光沢があるので、葉の光沢だけで確信を持つのは困難です。で…《オオフジイバラ》の托葉は、淡緑色から帯赤色まで変異はありますが、托葉の先がやや細くなりその先が糸状に伸びていて、人が万歳したような形になっているのが特徴です。
コレが《テリハノイバラ》では、托葉は、淡緑色で先が三角形状のほぼ長方形なのが特徴です。また、テリハノイバラでは茎は立ち上がらずにツル状に伸びていて伏していることがほとんどなのも特徴です。
*因みに【モリイバラ》《フジイバラ》は、やや標高の高い場所に自生していて、普通低地には自生はないです。《モリイバラ》は、棘が真っ直ぐで長く、葉裏が白っぽいのが特徴です。また《フジイバラ》だと、他とは異なり頂小葉の大きさが側小葉と同じ大きさであるのが特徴です。
☆☆☆ところで、知られた詩歌や本草書などには、オオフジイバラとしては、現れていないようです。《ノイバラ》の場合は……
平安時代の『倭名類聚抄』の「薔薇」に古名の『営実(ノイバラの果実のことです)』は【和名 無波良乃美(むばらのみ)】という記載があるそうです。『本草和名』にも同様に現れているらしいです。
【薔薇そうび】は漢名です。平安時代には、この漢名も使われていたようです。現代ではバラを「薔薇」としています。
☆☆☆万葉集の2首で詠われている「うまら(荊)」は、ノイバラであるとされています。 ☆☆☆
「我はけさ うひにぞみつる 花の色を あだなるものと いふべかりけり」 紀貫之があります。「我はけさ うひにぞみつる・・・」と「さうひ」が詠み込まれています。 「古今集
江戸時代の「本草綱目啓蒙」には「営実」として「ノイバラ」や「野薔薇」などの名で現れています。また、貝原益軒による「大和本草」などにもその名が現れています。
江戸時代の蕪村の句にいくつか詠われています。「花いばら 故郷の路に 似たるかな」や「愁ひつゝ 岡にのぼれば 花いばら」などがあります。これらの句の「花いばら」にはオオフジイバラが含めれていた可能性があります。
因みに、ノイバラの果実は薬用になりますが、オオフジイバラの果実は通常薬用にはしないようです。ただし、ノイバラの果実は作用が激しいので民間での使用は避けるべきです。完熟前の果実を天日干ししたものが生薬の【営実えいじつ】で専門家が下剤などに用います。